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折角の七夕なのでサイト開設記念に。気持ち的には鬼円ですが、鬼道+円堂かもしれません。
「鬼道、ちょうどいい機会だし、やっていこうぜ!」
そう円堂に言われて鬼道が連れてこられたのは商店街に置かれた大きな笹の前だった。
本当の願い
そもそも鬼道が円堂とここに来たのは響木監督に用があったためだ。それも無事に終わり、時間が早いということもあって河川敷か鉄塔広場でサッカーをしようということになっていた。
二人連れ立って歩いていると円堂が何かに気付いたようだった。
「そっか。今日って七夕だったっけ」
見れば商店街の中心にいつもはない笹が置かれており、人が集まっていた。
「ちょうどいい機会だし、やっていこうぜ」
と、連れてこられて冒頭に戻る。
「鬼道、書けたか?」
商店街の人に渡された紙を見て、しばらく唸っていた円堂だったが、ピンと何か閃いたのか、すらすらと書き上げたのを鬼道は見ていた。
「ああ。お前は何て書いたんだ?」
そう尋ねれば、ずいっと彼が書いた短冊が目の前に出される。
そこには・・・・・・
『色んなやつとサッカー出来ますように』
『チームのみんながケガしないでサッカー出来ますように』
と書かれていた。前者は何とも彼らしく、後者もチームのキャプテンとして常に周りを気遣う彼らしくもある。
「なるほど。しかし何故二つも書いてあるんだ?」
普通は願い事は一つではないかとも思うが、円堂の願いは実に無欲だし微笑ましくもあった。
「だって書くとこ余ってたし、どっちも選べなかったんだ」
だから両方書いたと。
「それより鬼道は?」
と興味津々な顔をされれば否とは言えず、渋々当初書く気はなかった短冊を「これだ」と目の前に翳した。そこには
『妹が無病息災で笑顔でいられますように』
とだけ書かれていた。それを見た円堂は
「うん、そうだよな」
と感心したように頷いたかと思えば
「鬼道はいいお兄ちゃんだよな」
とにかっと笑ったのだ。その笑顔と言われた言葉に自然と顔に熱が集まるのを鬼道は感じていた。
「そういえば願い事は一つでなくてもいいんだったな」
「へ?うん」
きょとんとした円堂を横目に見つつ、鬼道が書いたものは
『うちの主将が少しは勉強にも目を向けますように』
と書かれており、円堂は一目見た瞬間に
「なんだよ、それ!」
とちょっと拗ねたような顔になる。
「本当のことだろ。そろそろ試験だ。準備は万全だろうな?」
「えーっと・・・」
案の定、視線を泳がす円堂に鬼道はわざとらしく溜息を吐くと
「今日のサッカーは中止だ。このまま俺の家で試験勉強するぞ」
「えーーーーっ!!」
「決定だ。補習など受けたくないだろう?」
「それはそうだけど・・・」
そのまま鬼道に半ば引きずられるように、その場を後にした円堂は目にすることはなかったものがある。
鬼道の短冊にはまだ秘密があった。円堂が見た願い事が書かれた短冊の裏。そこには
『円堂の願いが叶いますように』
と綺麗な細い字で書かれた願い事があった。
END