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なのでちょっとだけご注意下さいませ。
まずは一冊目の新刊です。
「Wake from a Nightmare ~悪夢からの目覚め」
新書 P52 鬼道×円堂
悪夢に魘される(エイリア学園時の)円堂と現実の悪夢に苛まされた鬼道の、悪夢からの脱出法とは?
みたいな感じでシリアスを狙いましたが、単なるイチャイチャ本になったような気も・・・・・・。
続きにサンプルです。宜しければ、ご覧下さいませ。
「円堂、そこに座れ」
「え……?」
鬼道が指し示したのはベッドの上で、円堂が躊躇っていると焦れた様に鬼道が円堂をそこまで引っ張ると、トンと胸を突いた。
「わわっ!」
あまりの突然の行動に、円堂は受け身も取れずベッドへと沈んだ。
「なにするんだよ、鬼道」
「いいから。大人しくしていろ」
そう言うと鬼道はタオルを持ってきて円堂の目に宛がった。それは水で濡らしたもので、ひやっとするほど冷たかった。
「うっ!冷たい」
「少し我慢しろ」
だが、その冷たさもすぐに気持ち良くなった。何だか目元がずっと痛かったから、その冷たさが丁度良かったのだ。
「このままにしておいたら明日酷い顔になるぞ」
「え?」
「目元が赤く腫れていた。気付かなかったのか?」
「腫れてた…のか?」
勿論気付かなかった。気付いていたら鬼道の部屋に来る前になんとかしていた筈である。
ということは自分は今にも泣いてましたという顔で、鬼道の前に立ったことになる。
わぁ!と内心円堂は悲鳴を上げた。世話にならないとか佐久間に言っておいてこれである。いい加減、自分って本当に馬鹿かもしれないと自己嫌悪でいっぱいになる。
「ご、ごめん。鬼道」
当てられたタオルで目を押さえたまま立ち上がる。
「円堂?」
「これサンキューな。ちょっとだけ貸してくれ」
じゃあ、とばかりにそのまま部屋を出ようとする円堂に、すぐに気付いた鬼道が「待て」とその手首を掴み、再びベッドへと倒す。乱暴な仕草のようで円堂の後頭部に手を添えるのは忘れない。こういうところが円堂から言わせると、やはり優しい男なのだろう。
「このまま俺が帰すと思うか?」
「俺、もう大丈夫だから」
「なにがだ?」
「鬼道・・・・」
「これのどこが大丈夫なんだ?円堂」
鬼道の声が一段と低くなる。
「どうして俺を頼らないんだ?」
どこか苦しげな鬼道の声に、タオルを外してそっと円堂が視線だけを上げれば、鬼道の表情が悔しげに歪んでいた。
「そんなに俺は頼りにならないか?」
「違う!鬼道。そうじゃない」
止まっていたはずの涙がまだ溢れ出てきてしまう。最悪だ、と円堂は思う。鬼道の前だけはもう泣かないと決めていたはずなのに…。
「そうじゃ、ないんだ……」
嗚咽混じりになってしまった声を何とか奮い立たせようとするが、声は持ち主を裏切り、感情のままに震えていた。
「円堂……」
そんな円堂とは逆に鬼道は頭の中が冷静になっていくのを感じた。ここで円堂を責めても仕方ないのだと。
それに泣いている円堂を見ると、どうしたって慰めたくなるのだ
「円堂……」
流れ落ちる涙を優しく指先で受け止めると、宥めるように額や頬に口付けた。友情にしては少々行き過ぎた行為も、あの時から少しずつエスカレートしたもので二人にとっては普通だった。円堂ですら疑問にも思わない。
けれど鬼道のそんな優しさが今の円堂には返ってつらくて「やっ」と鬼道を押しのけるように胸を手で押した。
「そんな…優しくなんか、しないでくれ」
「無理だな」
円堂の手は震えていて、殆ど力が入っていなかった。それだけ弱っているということだ。
鬼道は円堂のその手を取り、自分の頬へと導いた。どれだけ外にいたのか。円堂の手はひどく冷たかった。暖めるように自分の手を重ねる。
「どうしたって俺はお前には甘いんだ。こればかりは諦めろ」
「どうして……?」
「…好きな奴に冷たくするほど、屈折してはいないつもりだが?」
「好きな奴って……」
「お前以外にいないだろう?」